桃は晩春の頃、桜に少し遅れて淡紅色の花を咲かせる。華やぎのある桜の花と比べると、桃の花には親しみやすい鄙びた美しさがある。
掲句は、咲き始めから満開になるまでの「桃の花」の風情を、「ほつと」「ほほと」という二つの擬態語により描写した作品。「ほつと」咲いた一輪の「桃の花」には、寒さからようやく解放された安堵が感じられ、「ほほと満ちゆく」には、咲き満ちていく「桃の花」の笑み零れるような豊かな風情が、掬い取られているように思う。桃が咲いていく間も季節は進み、四囲は春爛漫の季を迎える。『俳句』2026年3月号。