山に浮びて剪定夫濃くただよふ 直人
「剪定(せんてい)」は、その年の実の生りを良くするため、リンゴ、梨、桃、梅、葡萄などの果樹の芽吹き前に枝を刈り込むこと。おおむね3月頃に行われる。
掲句は作者の住まう甲府盆地の果樹園での作業風景を詠んだもの。桃などの果樹に登って作業をしている「剪定夫」の四囲を、山々が取り囲む。作者にとって見慣れた景であったろう。「濃くただよふ」との一見冷やかな突き放した措辞に、見慣れた景を前にした作者の工夫の跡が見える。日頃親しんでいる身近な風土を新鮮に捉えるのは、決して生易しいものではないのだ。昭和47年作。『日の鳥』所収。