蔵出しの匂ひに酔ふな燕の子 直人
「燕の子」は、巣から黄色い口を大きく開けている燕の雛鳥や、巣立ちの時期の燕の幼鳥をいう。燕は、春、南方から渡って来た後、人目の届く軒下などで営巣する。
掲句は、酒蔵の梁の巣などに育つ「燕の子」に向かって、「蔵出し」の酒の匂いに酔うなと呼びかけた作品。「蔵出し」は、貯蔵してあった蔵から出したばかりの酒。作者はその芳醇な香りを愉しみながら、燕の巣を見上げているのだ。この句のもつ親しみ深い声調からみて、身近にあるごく小規模な酒蔵を思い浮かべたい。日一日と育っていく「燕の子」に寄せる作者の愛情も感じられる。平成20年作。『風の空』以降。