廣瀬直人の一句(12)

どの雲となく近づきて春の富士 直人

「春の富士」は雪解け前、山開き前の、桜などの春景色を背景にした富士山。「春の山」の傍題。雪を被って白皚皚の富士が春光を受けて麗しく野の彼方に据わる。

掲句は、作者の住む甲府盆地から仰がれる「春の富士」を詠む。「どの雲となく近づきて」は、いくつかの浮雲が漂いながらゆっくりと流れていく様が思われる。折しも日永の頃。人も雲も、急ぐことなく歩みを進めていく。「春の富士」はそんな中に穏やかに聳える。昭和61年作。『朝の川』所収。

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