花衰ふる紅梅に尉鶲 直人
「紅梅」は紅色の花を咲かせるウメのことで、多くの品種がある。白梅より少し遅れて咲き始め、艶やかで親しみのある色合い。春先の冷たい空気の中で、ようやく春が訪れた華やぎが感じられる。
掲句は咲き闌けて花が衰え始めた「紅梅」に来た尉鶲を詠む。尉鶲は雀くらいの大きさで、腰と尾が錆赤色の美しい冬鳥。「花衰ふる」との措辞には、紅梅の咲き始めから咲き終わりまで、花に注がれてきた作者の旬日にわたる懇ろな眼差しが思われる。また、身辺に華やぎをもたらした花の名残を惜しむ作者の思いも、そこはかとなく伝わってくる。尉鶲もまた、紅梅の名残を惜しんで枝に来ているのかも知れない。昭和53年作。『朝の川』所収。