しんしんと縹を流す師走空 日下野由季

「師走(しわす)」は本来は陰暦十二月の異称。実際には陽暦十二月の意味で用いられることが多く、年末の忙しさを感じさせる言葉だが、「師走空(しわすぞら)」といえば、忙しない中でも空を仰ぐ心のゆとりや独り心を感じさせる。

掲句は「師走空」の色合いに焦点を絞った作品。〈うすうすと紺のぼりたる師走空 龍太〉では「師走空」の紺のグラデーションが見えてくるが、この句は、「師走空」がしんしんと「縹(はなだ)」を流していると詠んだ。「縹」は平安時代から続く色名で、藍色より薄く、浅葱色(あさぎいろ)より濃い、ややくすんだ青色のこと。年の瀬の空の含むかすかな潤いを表現したものと見たい。「しんしんと」の擬態語は、平穏な「師走空」の形容であるとともに、年の瀬の忙しなさの中での作者の独り心を映し出しているようだ。『俳壇』2026年3月。


コメントを残す