全貌といふ初富士に会ひにゆく 直人
「初富士」は元旦などにその年の最初に見る富士山のこと。雪を頂いた清々しい姿や、初日の出を浴びている様は、新しい年を迎えた気分に相応しい。
掲句は、新たな年を迎えて「初富士」に会いに行くところを詠む。作者の住む甲府盆地からは、全貌の富士を目にすることができないのだ。だが、この句では、「初富士」はまだ作者の眼前には現れていない。この句の焦点は「初富士」そのものではなく、新年を迎えて「初富士」に見(まみ)えんとする作者の心の弾みにある。「初富士」を眼前にする前の作者の心の逸りが、そのまま作品の気息になっている。「全貌といふ」とのさり気なく置かれた上七の措辞に熟練の味わいがあろう。平成20年作。『風の空』所収。