正月の雪真清水の中に落つ 直人
「正月」は一年の一番初めの月(一月)のことだが、特に三が日や松の内(関東は7日まで、関西は15日まで)が正月気分に浸る期間。新たな年を迎えてのめでたい雰囲気がある。松飾を立て、鏡餅を飾り、雑煮を食べて一年の無病息災を願う。
掲句は自他ともに認める直人の代表作である。作者の自句自解によれば、新年会に山廬を訪れたときの作品であり、当日は、前の晩から降り続いた雪が朝になって止んだという。山廬裏山の湧水といい、降り止んだばかりの雪といい、素材が揃っている中で佳句を得た訳だ。対象との一期一会の出会いを活かせるかどうかが、作句の分かれ道なのだろう。
加えて、この句のポイントは上五の「正月の」にあることを指摘しておきたい。飯田龍太は、この句について、「「真清水」の澄み、まさにここに極まった感がある。」云々と鑑賞しているが、なぜ上五が「一月の」「元日の」ではなく「正月の」なのかについての具体的な言及はない。だが、この句で点睛の働きをしているのは、「正月」という上五に据えられた季語だろう。上五に「正月の」と置いたことにより、句に馥郁とした華やぎが生まれた。白銀の雪の世界に紅を点じたような趣である。この辺りの季語の選択は、一筋縄ではいかないところ。昭和47年作。『日の鳥』所収。