「薄氷(うすらい)」は池や水たまりに薄く張った氷や春になって解け残った薄い氷のこと。立春を過ぎた初春の頃に見られる現象。冬の厚い氷とは異なり、溶けやすく割れやすい。
掲句は「薄氷」に残っているざらざらした風の跡を詠む。解け残った氷の表面に筋や亀裂、凸凹などがあるのはよく目にする情景だが、作者はそれを風の跡と直感した。「ざらりと」との擬態語は、春になっても残っている冬の手触りを感じさせ、作品に臨場感をもたらしている。辺りを吹き抜ける風は、明るさをともないながらも相変わらず鋭く冷たいことだろう。『俳句界』2026年2月号。