年の始めを言祝いで「初春(はつはる)」という。旧暦の年の始めは、二十四節気の立春の頃に当たったので、「初春」と呼んで祝った。新年の喜びと春の訪れを同時に感じさせる言葉。新暦に変わり真冬に正月を迎えるようになっても、旧暦時代の名残から年の始めを「初春」と呼ぶ。
掲句は、心の中で今日は「初春」と思い、その気分に浸りながらも、いつもと変わらずに「香の物」を食べているとの句意。「香の物」は白菜の漬物などが思い浮かぶが、いずれにしても日常作者が好んで食している一品だろう。何の変哲もない日常との対比で、「初春」という言葉のもつふくよかな香りが、さり気なく活かされている作品。『俳句』2026年1月号。