切株に小鳥の御慶きりもなし 高野ムツオ

「御慶(ぎょけい)」は家族、親戚、友人、知人、近隣の人たちの間で年始に交わされる挨拶のこと。普段は親しんだ間柄でも、改まって去年の礼を述べ、新年のよき付き合いをお願いする。

掲句は、年始に人間の間で交わされる「御慶」が小鳥たちの間でも交わされていて、その声が切株に降り注いでいると詠む。メジロはメジロ同士、ヒヨドリはヒヨドリ同士で、よき年を迎えたことを喜び合っていると考えるのは、確かに楽しい。地平線を離れた太陽の光が、樹上の鳥たちにも、樹下の人々にも満遍なく生の喜びを与えていることだろう。『俳句』2026年1月号。


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