「隙間風」は冬の寒い日に、家屋の障子や戸の隙間から吹き込んでくる冷たい風のこと。古い家屋や、冬支度が十分でない建物で感じることが多い。隙間に目張りをしてこれを防ぐ。
掲句は、劇場での作品。奈落は、劇場の舞台の下にある地下空間のことであり、舞台袖は、観客席からは見えない舞台の両脇にある奥まった空間のこと。どちらも観客は通常意識しないが、舞台の運営にとっては重要な空間だ。劇が演じられている最中、舞台関係者、或いは観客の一人としてそこに踏み込んだ作者は、吹き抜けてゆく冷たい隙間風を感じたのだ。恐らくは観客席は暖房完備で、隙間風とは無縁のぬくぬくした空間だったのだろう。『俳句四季』2025年12月号。