考へるなら黄落の樹下の席 増成栗人

「黄落」は木の葉が黄色く色づきながら落ちること。イチョウやケヤキ、クヌギなどの広葉樹が黄葉しながら落ちる様は、本格的な秋の到来を感じさせる。紅葉しながら落ちるカエデやサクラについては、「紅葉かつ散る」という。

掲句の樹下の席は公園のベンチだろうか。何かひとりになって考えたいことがあるなら、黄落の樹の下がいいと言っているのだ。一句の緩やかな声調には、独白の調べがある。しかし、秋たけなわの明るさの中での考え事であるから、さほど深刻な内容ではあるまい。『俳句四季』2025年12月号。


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