山々のひしめく冬の来りけり 井上康明

「冬来る」は冬が到来すること。二十四節気の一つである「立冬」(11月8日頃)の傍題。まだ秋の気配が残る時期だが、朝晩の冷え込みや時折訪れる雨風に冬の訪れを感じる。

掲句は明け暮れ山に囲まれて暮らす作者が、四囲の山々を眺めての作品。「ひしめく」との山々に対する形容は、平明だが平凡ではない。その一語により、途切れなく連なる山々の姿が見えてくる。作者も山々も、張りつめた思いで、冬の到来を受け止めているのだ。『俳壇』2025年12月号。


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