野仏のつむりを蹴つて蝗飛ぶ 橋本榮治

「蝗(いなご)」はイナゴ科に属するバッタ類の総称。「螽」「稲子」とも表記する。体長は3センチほどで体色は黄緑色。実りの田に棲みついて、稲を荒らす害虫。捕まえて佃煮などにする。

掲句は、稔り田の傍らに立つ野仏の頭にたかった「蝗」をユーモラスに詠む。「あたま」「かしら」と言っても同義だが、「つむり」と言ったところに、野仏に対する作者の親しみと心の余裕が表れている。一匹の「蝗」を見かけてもそう目くじらを立てることはないのだ。一面の稲穂が波立って、今年の豊作を約束しているのだから。『俳句』2025年10月号。


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