「月涼し」は暑さの厳しい夏の最中、夜空に輝く月に涼しさを感じること。また、そのような「夏の月」そのものを指す。「涼し」(夏季)という季語は、様々な言葉と組み合わせて使われることが多く、「月涼し」もその一つ。
掲句は温泉地の湯畑の周りで湯上がりの散策を楽しんでいる情景。湯畑は源泉を地表や木製の樋に掛け流し、温泉の成分である湯の花の採取や湯温の調節を行う施設のこと。 湧き出た湯は、湯樋を通して温度を下げ、その地の旅館などへ送られていく。湯上りの寛いだ気分で、折りからの月を振り仰ぐとき、昼の暑さを忘れさせてくれるような涼しさが五体を包む。同じように散策を楽しんでいる客の影もちらほら見えるだろう。『俳壇』2025年10月号。