一部屋に居場所のいくつ秋灯 依光陽子

「秋灯(あきともし)」は秋の夜の灯火のこと。シュウトウとも読む。灯火の下で、長い夜を独り静かに味わい、友と語らい、書に親しむ。

掲句は「秋灯」に照らされた一部屋を詠む。居間、リビングなどと呼ばれる一部屋に、作者は多くの時間を過ごす。その部屋の中に、作者の居場所がいくつもあるというのだ。本を読むときはソファーに腰掛け、食事の時はテーブルに向かい、パソコンを使うときは隅の椅子に腰かけ、といったように。秋は、自らの日常を改めて振り返る季節でもある。『俳句』2025年9月号。


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