「川渡御(かわとぎょ)」は「天満祭(大阪の天満宮の夏祭)」の傍題として歳時記に出ているが、一般的には祭の神事の一つで、厄を祓い五穀豊穣等を祈願して神輿(みこし)を川に入れる行事のこと。全国各地の夏祭で行われており、「天満祭」に関連する季語として扱っている現状は、改めてはどうかと思う。
掲句は、秩父で毎年7月19、20日に行われる川瀬祭りを詠んだ作品。大祭の日には、神社神輿が荒川の中へと入る神輿洗いの儀式が行われる。川の水深が増すにつれて、神輿衆のうち前列の男たちが「づづと」崩れたという。この擬態語は、句にダイナミックな臨場感をもたらす絶妙の措辞。たった一語が句に命を吹き込むことを、改めて認識させられる作品。『俳句』2025年9月号。