初鰹(はつがつお)は、春から初夏にかけて、黒潮に乗って南の海から日本の太平洋沿岸を北上する鰹のこと。若葉の頃伊豆、房総沖で獲れる鰹が江戸っ子に珍重された。高知県で初鰹が獲れるのは、それより少し早い3~5月頃。
掲句は旅先で初鰹を食べながら、今、「龍馬の国」に来ていることを改めて思っているとの句意。下駄の歯ほどの厚みに切った鰹のタタキを粗塩をつけて食べる「塩たたき」は高知独特の食べ方で、薬味を一切使わないのが一般的という。作者はその素朴な食べ方に、この地が坂本龍馬の生国であることを思い起こし、懐かしさを感じているのだ。『俳句』2025年9月号。