母はさくら父はけやきの木下闇 藤田直子

「木下闇」は、夏の木々が鬱蒼と茂り、日光が遮られて、樹下が昼とは思えぬ暗さであること。日向から急に木蔭に入るときなどは、特に暗さを感じる。

「木下闇」を形づくる木々の種類を普段は気にすることはないが、細やかに見れば、樹形が様々であるように、樹下に作られる暗がりにも、桜、欅、椎などの木の種類によって濃淡があり、明暗があり、それぞれの印象があるのだろう。掲句は、「さくら」の木蔭に母を、「けやき」の木蔭には父を感じると詠む。「さくら」「けやき」との仮名書きは、すでに故人になった父母に寄せる作者の思いのやわらかさを表している。『俳壇』2025年9月号。


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