単に「蝶」といえば春の季語だが、「揚羽蝶」は夏に見かけることが多いので夏季に分類されている。その大ぶりな美しさは、夏の季節にふさわしい。黒地に緑の光沢をもつ「烏揚羽(からすあげは)」「烏蝶(からすちょう)」も「揚羽蝶」の一種。
「烏蝶」は、山路を歩いているときなどに、深い森の奥から不意に眼前に現れることが多い。掲句では、木陰から日向に躍り出た「烏蝶」が生き生きと描写されている。「影より黒き」との措辞には、真夏の日の光が真上からさんさんと降り注ぐ様も想像される。『俳壇』2025年9月号。
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