「新樹(しんじゅ)」は若葉に覆われる初夏の木立のこと。「新緑」と類似の季語だが、「新緑」は若葉の色合いのみずみずしさに、「新樹」は木の姿に焦点を当てた言葉。山や野に生命力がみなぎる季節である。
掲句は初夏の夜、ものを書こうとして万年筆を手にしての作品。作者の手にある万年筆は、丁度木々が土中から水を吸い上げるように、毛細管現象によりペン先へとインクが伝わってゆく。ペン先のインクが匂った瞬間屋外の新樹を想像したところに、作者の若々しく柔軟な詩心を感じる。『俳句界』2025年8月号。
kknmsgr
Δ