「緑蔭」は夏の日差しのもとの繁った木立の陰をいう。木々の繁りからちらちらと零れる日の斑も心地よい。明るい緑陰の椅子で読書をしたり会話を楽しんだりする人々の姿も想像される。
掲句は木蔭へ向かって、2メートル近くもある大きなコントラバスをキャリーカートなどを使って押してゆく場面を詠んだ作品。押していく先にあるのは野外の演奏会場だろうか、それとも一人練習するために木蔭へ押してゆくのだろうか。いずれにしても、「緑蔭」という季語の明るいひびきが一句全体をつつんでいる。近くに談笑する人々の声も聞こえるようだ。『俳句』2025年7月号。