花種をつまむ指先むずむずす 久根美和子

「花種(はなだね)」は草花の種のことで、「種物(たねもの)」の傍題。自家採種の場合は、前年採取した種を軒先や天井などに吊し乾燥させて、春になるまで保存する。また、種物屋や花屋の店頭に花の写真を印刷をした草花の種の入った紙袋が並ぶのも春らしい光景である。

掲句は「花種」を花壇や植木鉢などに蒔くところを詠んだ作品。つまんでは蒔いてゆくときの、指先に触れる細かい「花種」の感触を「むずむず」と表現した。この擬態語(オノマトペ)は、作者の「花種」に寄せる期待感や陽春の浮き立つような心持ちをも感じさせて効果的だ。『俳句』2025年6月号。


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