別のこと考へてゐる滝の前 福神規子

「滝」は年間を通じて見られるが、その涼味から夏の季語とされている。季語として定着したのは近代以降である。

掲句は「滝」そのものよりも、「滝」を前にした人の心の在りようを詠んだ作品。自然美としての眼前の「滝」に心を奪われるのが人の常だが、掲句では、折角の「滝」を前にして、別の考え事をしているというのだ。正攻法の作品ではないが、人の心の一面を確かに捉えている。「滝」という季語が、料理の隠し味のように利いている。『俳壇』2025年6月号。


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