敏夫水兵鬼房歩兵ちるさくら 遠山陽子

桜の花は盛りを過ぎると一斉に散りはじめる。花吹雪(はなふぶき)は、吹雪のように花びらが舞い散ること。

掲句は桜が散る中で、水兵・歩兵だった頃の「敏夫」「鬼房」の面影を追っているとの句意。三橋敏夫は戦時中に召集を受け、横須賀海兵団に入団した。佐藤鬼房も徴兵により入隊し、中国、南方に転戦した。両氏の戦後の句は、この戦争経験抜きには語れない。作者の両俳人に対する追慕の思いを、「ちるさくら」との仮名書きがやわらかく包む。『俳壇』2025年6月号。


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