保育士の大きポケット下萌ゆる 吉川千早

「下萌(したもえ)」は早春の頃、大地から草の芽が萌え出ること。待ちに待った春がようやく訪れる。

掲句から、春先、園庭に出て戯れている保育士と園児たちの姿を思い浮かべたい。冬の間は園舎にこもりがちだった園児たちも、暖かい春の日差しが降り注ぐ日は、保育士と一緒に外遊びをしているのだ。この句では、そうした背景の一切を省略して、保育士の大きなポケットに焦点を絞った。一読自ずから目に浮かんでくる四囲の情景は、春が来た喜びに満ちている。『俳句四季』2025年5月号。


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