片足で立ちたる虹よ戦場よ 春田千歳

「虹」は雨の後、太陽と反対側の空に現れるアーチ状の七色の帯。夏の驟雨の後などに現れることが多いので夏の季語。虹がアーチの片側だけ見えるのが「片虹」。

掲句は世界の各地で起きている戦争を詠んだ作品。といっても、特定のどこかの戦火の地を念頭にしたものではないだろう。今、作者の眼前にあるのは片虹。それを「片足で立ちたる虹」と表現した。その措辞は、自ずから、戦禍で片足を失った傷病兵の姿を連想させる。眼前の片虹から「戦場」へのイメージの飛躍が実感をもって読者に伝わるのは、その措辞の効果だろう。戦争に対して詩は無力だが、それでも詠まずにはいられないとの思いが、掲句の「よ」の詠嘆に表れている。『俳壇』2025年5月号。


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