新樹光鳥影を追ふ声を追ふ 野木桃花

「新樹」は若葉におおわれる初夏の木立をいう。「新樹光」は「新樹」の若葉の照り返しのこと。周囲はみずみずしい明るさに満ちる。

掲句は初夏の木々の光が、木々を訪れた鳥の姿やその声を追っていると詠む。鳥たちは木々を塒にしたり若芽を食べに訪れたりして、木々と関わり深く生活しているが、木々の方でも、そうした鳥たちに慈愛の眼差しを注いでいるのかも知れない。この句は「新樹光」を擬人化しているが、作者が鳥影やその声を追っているとも読める。どちらが正しいというのではない。どちらにも読める曖昧さが俳句表現の醍醐味。『俳壇』2025年5月号。


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