雑食の犬歯と臼歯夏来たる 小川軽舟

「立夏」は陽暦5月6日頃。暦の上では夏になる。「夏来る」「夏立つ」、「夏に入る」などともいう。目に入る景色も新しい夏の光を纏う。

掲句は、夏を迎えて、ものを食べるということを改めて意識した作品。動物の多くは肉食と草食に分かれるが、人間は、口中の犬歯や臼歯を使って、動物の肉も野菜も穀物も、自然界で食べられるものは何でも頂戴する。そこには地球上生物としての逞しさがある。一方、夏百日を健やかに過ごすために、否でも応でも歯を使って食べ続けなければならないところには、一抹の悲哀もあろうか。『文藝春秋』2025年5月号。


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