「鷹鳩と化す」は現在の太陽暦で3月16日から20日の頃、春の穏やかな気配の中で、普段は獲物を狙う猛禽類の鷹も、ほのぼのとした鳩に変身してしまうこと。
掲句は、普段は使わないがらんとした蔵二階にも小窓を通して戸外の日差しが差し入り、鷹が鳩に化す頃の陽春の気配が感じられるとの句意。ひっそりとした蔵二階にも、細々とながら、駘蕩とした春の気配が及んでいるのだ。父の生家にあった納屋の二階の雰囲気が丁度こんな感じだった。かつては養蚕で繁忙を極めたであろう納屋の二階も、当時、既にがら空きの状態だった。令和5年作。