「春愁(しゅんしゅう)」は春の最中におぼえる愁いのこと。特別な理由がある愁いではない。春光の中にいて、ふとしたことで心がくもる。
掲句は、自らの日常の動作に「春愁」を重ね合わせての作品。ハンドクリームを手にべたべたと塗ったのは「春愁」の結果なのか、或いはその原因なのかは、問うこともあるまい。作者の心の隙間に、知らず知らずのうちに「春愁」が入り込んできたのだ。ハンドクリームを手に塗るという日常のありふれた動作に焦点を絞ったところに、作者の俳人としての力量を見る。『俳句』2025年4月号。
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