オムレツの真ん中に春立ちにけり 涼野海音

「春立つ」は「立春」のこと。節分の翌日。寒さは依然として厳しいが、梅の蕾は膨らみ、日の光は力を増してくる。

掲句は皿にのせられたオムレツの真ん中に春の到来を感じ取っての作品。ふっくらと焼き上がったばかりの玉子の黄色い薄皮からほのぼのと立ち昇る湯気と香り。見るからに食欲をそそられる光景だ。食べる前の至福の一瞬を、「春立つ」の季語を用いて一句に定着させた。俳句の骨法である単純化の効果を改めて認識させられる。『俳句界』2025年4月号。


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