春の星まで巻貝の螺旋階 野中亮介

「春の星」は春の夜空に潤むように見える星のこと。大気が潤っているため、冬よりも見える星の数は減ってくるが、寒気に耐える必要もなく、ゆったりと星空観察を楽しめる。

掲句は「春の星」を仰いでの想像の一句。光年を隔てた宇宙の彼方にやわらかな光を放つ春の星まで、巻貝の螺旋階段が続いているというのだ。無限に続く巻貝の渦の螺旋を辿って、春の星まで行き着くとの想像はメルヘンチックで楽しい。春の夜の瑞々しい情感の中で、想像力が存分に翼を広げている感がある。巷の俳句総合誌に溢れている荒唐無稽な空想句とは一線を画する。『俳句四季』2025年4月号。


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