春陰や押して重たき画廊の扉

「春陰」は春の曇りがちな空模様のこと。「花曇り」という言葉もあるが、「春陰」は桜の咲く頃に限らない。どこか心に翳を落とすような空合いだ。

掲句は銀座のとある画廊の扉の重い感触を詠んだもの。人体の形のドアノブを押すと、そこは画廊特有の昼の静寂。絨毯を踏んで絵の前に立つと、都会の真ん中にいることを忘れるほどだが、「春陰」の翳りが、絶えず私の心に付きまとっていた。平成22年作。

,

コメントを残す