「料峭(りょうしょう)」は春の風がまだ肌を刺すように冷たく感じられるさまをいい、春寒とほぼ同義だが、より寒さの感覚が強く表に出ている印象がある。
掲句は湘南の江ノ島を訪れたときの作品。改めて調べてみると、令和5年の人口は292人。昼間参道等で見掛ける人々の多くは観光客だ。島民はひっそりと沿岸漁業に従事したり民宿を営んだりしているのだろう。観光客の溢れる道は、そこに住む人の生活道路でもある。春になったとはいえ、その日は寒々とした風が樟などの常磐木を鳴らしていた。実際には「一本の道で足る」といえるほど単純な町並みではないのだが、脇道や側道・間道は省略して、岩屋まで延びる参道と参道沿いの人々の暮らしに焦点を絞った。平成9年作。『河岸段丘』所収。