啓蟄(けいちつ)は3月5、6日頃。冬眠していた蛇や蛙などが暖かさに誘われて穴から出てくるころとされる。
掲句は私の膝に来て座った我が子のまとう陽の匂いに、春の到来を感じての一句。個人的には、今は巣立ってしまった我が子の幼かった頃の記憶がよみがえる作品でもある。一日外遊びをして帰ってきた子に、燦燦と降り注いでいた春の日差しの匂いがしたというのは、当時の私にとって新鮮な驚きだった。虫たちもその暖かな日差しに誘われて、穴から顔を出していたのだろう。平成10年作。『河岸段丘』所収。
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