ものの芽のみな産濡れのごとくかな 横澤放川

「ものの芽」は特定の木や草の芽ではなく、木の芽、草の芽を含めて、春になって芽吹き萌え出るいろいろの芽のこと。

掲句は「産濡れのごとく」との比喩により、草木の萌え出る命のかがやきを詠んだ作品。「産濡れ(うぶぬれ)」は恐らくは作者の造語だが、「産(うぶ)」の一字が生まれたままの様を意味し、「産衣」「産声」「産湯」などの用語があるので、その意味は明らかだ。眼前の「ものの芽」から、生まれたばかりの嬰児の全身が湯から上がったばかりのように濡れている様を想像したのだ。春という季節の生命感が把握されている一句。『俳句界』2025年3月号。


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