キューピーの手足みじかし水温む 大木あまり

「水温む」は、寒さが去って、川、湖、池などの水が温かくなること。水草が芽を出し、水底に潜んでいた魚がうごきだす。

掲句は「キューピー」の手足が短いとの発見を、折りからの春暖の季節感の中で詠んだ作品。「キューピー」は言うまでもなく、ローマ神話に出てくる恋愛の神キューピッドを幼児体形につくったマスコット人形。頭のとがった裸体の童形で、背中に小さな羽がはえている。「キューピー」の愛らしい形は、ものの命がうごきだす春の季節感とぴたりと照応する。「水温む」は、春到来の気分を具象化する季語として的確に選び取られた。草木虫魚とともに、「キューピー」にも瑞々しい命が宿っているような錯覚を覚えさせる。『俳句』2025年3月号。


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