涅槃図に笹鳴のまま加はりし

旧暦2月15日は釈迦が沙羅双樹の下に入滅した日とされ、寺院では新暦の2月15日又は3月15日に涅槃会(ねはんえ)が執り行われる。当日は涅槃図を掲げて法要を営む。涅槃図は、沙羅双樹のもとに横臥した釈迦のまわりを、嘆き悲しむ弟子や動物たちが取り囲んだ図。

掲句は眼前の涅槃図を眺めながら、境内にいた鶯が、笹鳴きのまま涅槃図中の動物たちの中に加わることを想像しての作。まだ春の寒さの残る時季で、鶯はチャッ、チャッという冬の地鳴き(笹鳴き)のままだった。「笹鳴のまま」の措辞に、薄ら寒いその頃の季節感と、若干の諧謔味を効かせたつもりである。平成17年作。『春霙』所収。

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