一鳥の水蹴つて立つ恵方かな 岩岡中正

歳徳神がいる方向を陰陽道で恵方といい、恵方詣はその年の恵方に当たる社寺に初詣すること。歳徳神の方角はその年の干支により陰陽道で決められる。恵方詣をすると一年分の福が授かるという。

初詣に行く道すがらの情景だろう。鴨だろうか川鵜だろうか、一羽の鳥が水を蹴って飛び立った。「水蹴つて立つ」は、深々と湛えた水の量感やその揺らめきを感じさせる措辞。鳥が飛び立って波立った水の上にも青空にも、新春のめでたく厳かな気配が満ちている。『俳壇』2025年3月号。


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