両神山のむらさきだちて梅ひらく

梅は早春の寒気の残る中、他の花にさきがけて清楚な白色五弁の花を開く。「春告草」とも呼ばれるように、梅の花が咲きかけているのを見ると、春が到来しつつあることを実感する。

掲句は秩父宝登山(ほとざん)山頂の蝋梅園を訪れたときの作。蝋梅園の一隅の梅もぽつぽつ花を咲かせていた。「両神山(りょうかみ)」は三峰山、武甲山とともに秩父三山の一つで、山岳信仰の霊峰。台形型の鋭くぎざぎざとした稜線が特徴だ。蝋梅園から西南西へ30キロメートルほど隔たっているその山容は、当日、紫がかって見えた。遅まきながら山々に春が訪れたことを知らせる色合いだった。令和5年作。

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