寒中は短く淡い束の間の夕焼が、木立や建物の向こうの空を染める。刻々暮れて影を深めてゆく山や町の佇まいと夕焼のコントラストが美しい。
掲句はやや高みから寒夕焼を眺めての作品。作者が知り尽くしている故郷の大字(おおあざ)や小字(こあざ)の集落が眼下に点在し、その先の空は燃え立つような寒夕焼。古くからの村や集落の名残をとどめているそれらの大字、小字は、そこに住み着いて生活してきた人々の来し方を思い起こさせる。眼前に目に見える家々や集落、林などを描き出す替わりに、大字、小字と表現したことにより、一望にするその地のもつ歳月の厚みが浮かび上がってくる。『俳句四季』2025年2月号。