灯を消せば雪の降りつむ音生まれ 髙橋健文

「雪」は気象現象としては、大気中の水蒸気から生成される氷の結晶が空から落下してくるもの。月・花とともに古くから日本の伝統的な美のひとつとして意識されてきた。他方で、雪は人々の生活に制約を加え、支障となるものでもある。

掲句は夜もすがら降り続ける雪の音に焦点を絞っての作。灯を消した後、それまで気づかなかった雪の降りつむ音がさだかに聞こえてきたという。闇の中では視覚に替わって聴覚が冴えてくるというのは、人の五感の働きの不思議でもある。小止みなく降り続ける雪に対する作者の期待と不安が入り交じる。『俳句四季』2025年2月号。


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