南座のまねきあふぎてゐれば雪 名村早智子

「雪」は春の花、秋の月と並んで冬の美を代表するが、日本海沿岸の豪雪地帯では雪は美しいものであるどころか、白魔と恐れられる。雪には華やぎ、圧迫感、侘しさなど明暗の思いが入り混じる。

掲句は南座の「まねき」を仰いだとき、顔に雪が降りかかってきたとの句意。南座は京都の劇場。歌舞伎以外にも演劇やコンサートの公演が行われているが、この句の場合は毎年11月末日から行われる吉例顔見世興行の頃の南座を思い描きたい。役者の名前を記した「まねき」と呼ばれる看板が劇場の入り口上にずらりと並べられているのだ。即興の味わいのある句だが、にわかに降り出した雪を仰ぐ作者の歳晩の思いも重ねられている。『俳壇』2025年2月号。


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