「着ぶくれ」は重ね着をしたり、分厚い衣服をはおったりして、体が膨れて見えること。颯爽とした姿とは正反対の、鈍重な印象の自他の姿を自嘲や慰安を込めて詠むことが多い。
掲句は、不合理なことが多いこの世にあって、苦笑しながら世の不合理を受け入れ、順応している自らを省みての作品。袋を収納するため、或いは持ち運ぶために別の袋が要るというのも、何とも遣り切れないことだが、〈まあいいか〉と諦めながらレジに並んでその袋を買っているのだ。「着ぶくれ」という季語が句の味わいを引き出している。『文藝春秋』2025年2月号。