昔からの暦には伊勢神宮の伊勢暦、江戸の江戸暦など各地に特色あるものがあり、最近では企業や各種団体が作る美しい絵や趣向を凝らしたカレンダーなどがある。「新暦」「初暦」はこれらを新年に使い始めること。新しい年への期待感が膨らむ。
掲句は、新年に使い始める「新暦」を「命減らす」と表現し、新年の期待感や華やぎよりも、残生(ざんせい)に対する深沈たる重いに誘う作品だ。この句の「新暦」はモダンなカレンダーよりも、一枚一枚剝いでゆく日めくりの暦が相応しい。一日ごとに一枚ずつ剝いでゆくので暦は次第に薄くなっていく。「命減らす」はある程度の老境に達した人のもつ、暦に対する率直な感慨だろう。暦が薄くなっていくとともに、自らの残りの命の日数も減っていくのだ。そこには、今生の一日一日を愛惜する思いも滲む。『俳句界』2025年1月号。