鳰を見しことを二日の余慶とす 能村研三

俳句で「二日」といえば正月二日のこと。仕事始めの吉日とされ、初荷(はつに)、初商(はつあきない)など世の中が動き始める日でもある。

掲句は、正月二日、外出先の水辺で鳰(にお)を見たという。「余慶」は先祖の善行のお蔭で子孫が受ける幸福のことで、多分に仏教的・因果応報的な臭みのある言葉だが、この句の中では字面通りに、正月の目出度さの余りもの程度に受け止めればいいだろう。新年を迎え新たな気持ちで水辺に立った作者の目に、浮いては沈むの鳰の姿が、目出度いものの一つとして映じたのだ。『俳壇』2025年1月号。


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