俳句で単に「祭」といえば都市部の神社を中心に行われる夏祭を指す。「山車(だし)」等の巡行があり、舞や奏楽などの奉納が行われる。境内や門前には夜店が立ち並び、宵宮から祭り当日にかけて多くの人でにぎわう。「山車」は「神輿」などとともに「祭」(夏季)の傍題。
掲句は祭当日「山車」を引く人たちの中にいる作者自身を詠んだ作品だろう。これまで何回か転職をして、どの職場も「山車」が巡行する道沿いにあるといった場面が想像される。「前の職場」の前を通るときの多少の後ろめたい気分や気恥ずかしさが、さり気なく出ているところがいい。『俳句』2024年11月号。