「柊(ひいらぎ)」はモクセイ科の常緑小高木。初冬の頃に白い小さな四弁の花を咲かせる。冬の到来を知らせるそのひそやかな香りは清潔感がある。
掲句は、柊の花と折から音もなく降り続ける雨を取り合わせて、しみじみとした初冬の情感に読者を誘う作品。今日は時雨(しぐれ)模様の雨がしとしとと降り、生垣の柊の花を濡らしている。音を立てない小雨だから、却って、四辺のものがさむざむと濡れそぼつさまが強く印象される。「音無き雨は」の「は」の働きに注目したい。雨が自らを濡らしているような、そうした侘しい雨の降りようなのだ。『俳句』2024年11月号。